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筋トレ・野球・医学・プログラミングの備忘録

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筋が力を発揮するメカニズム

前回、筋が発達するのは「筋に対するストレスに適応するため」であり、そのストレッサーとして、物理的刺激と化学的刺激があることを書きました。
その刺激は、今持っている自分の能力を100としたら、101の刺激で十分ということもお伝えしました。

motchy-blog.hatenablog.jp

次は101の刺激に必要なトレーニングの重量やセット数などが気になるところですが、それを理解するためにまず筋が力を発揮するメカニズムについてお伝えします。

筋の構造

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引用元:骨格筋の構造|解剖生理をおもしろく学ぶ|看護roo![カンゴルー]

筋原線維

筋原線維とは、筋細胞の内部にある筋フィラメントが規則的な束のことで、タンパク質の塊です。
念の為説明しておくと、「フィラメント」とは、細長い線状のタンパク質の総称のことです。
筋フィラメントには、アクチンフィラメントと呼ばれる細いフィラメントと、ミオシンフィラメントと呼ばれる太いフィラメントの2種類があります。
これらが規則正しく交互に配列することによって筋原線維の横縞が作られます。

詳しくは後日追記します。

筋繊維(筋細胞)

筋繊維(筋細胞)は、通常の細胞と同じように細胞膜(筋細胞膜)を持ち、細胞内に細胞小器官やタンパク質をもった一つの細胞です。
通常の細胞との違いは、多核細胞であることです。これは、筋細胞は複数の細胞が融合してできた合胞体だからです。

筋線維の細胞質(筋形質)には、ミトコンドリアや筋小胞体などを持ち、筋収縮に重要な役割を果たしています。筋細胞膜には、落ち込んだ管状構造のT管や神経からの入力を受ける運動終板があります。軸索終末と運動終板の間のシナプスのことを神経筋接合部といいます。
1本の筋線維には原則として神経筋接合部は1ヶ所しかありません。
つまり「個々の筋線維は単一のシナプスからのみ入力を受けている」ということです。
これは、後々重要になってくるので覚えていてください。
そして、筋細胞膜の周囲を筋内膜によって包まれています。

筋線維束

筋線維束は、筋内膜によって包まれた筋線維数本〜数十本を筋周膜で包んだものです。
筋線維束は、骨格筋を肉眼的に解剖して見ることができる線維状の構造である。

骨格筋

筋線維束を更に筋上膜(深筋膜の一部)で包んだものである。

シナプス伝達

神経筋接合部において、活動電位が軸索終末に達するとシナプス前膜からアセチルコリンが分泌されます。
アセチルコリン2分子が運動終板のアセチルコリン受容体に結合するとナトリウムチャネルが開口し、脱分極によって終板電位が発生します。

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出典:骨格筋の構造と機能|骨格筋の機能|看護roo![カンゴルー]

終板電位がそれぞれ筋線維ごとの閾値を超えると活動電位が発生し、筋線維全体に活動電位が伝導して筋線維は完全収縮を引き起こします。終板電位が閾値を超えなければ、筋線維は全く反応しません。
このように刺激がある値(閾値)を超えると反応するが、少しでも刺激が閾値を下回れば全く反応しないことを「全か無かの法則」といいます。

運動単位

全か無かの法則により、筋線維に活動電位が発生するとその筋線維は完全収縮するとお伝えしました。
つまり、筋全体で発揮する力というのは、「一つ一つの筋線維が収縮する力を強めたり弱めたり調節しているのではなく、収縮する筋線維の数で決めている」ということです。
ここで重要になるのが、「運動単位」という考え方です。
1個の運動ニューロンとそれが支配する筋線維群をまとめて運動単位と呼びます。同じ運動単位に属する筋線維は同じ型の線維で、同時に収縮します。
複数の運動ニューロンから筋線維に入力があれば同時に収縮しないのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、1つの筋線維には原則1つのシナプスからしか入力を受けないのでそれが起こることはありません。

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出典:筋力増強と筋肥大の効果を最大にするトレーニング強度の最新エビデンス - リハビリmemo

骨格筋線維が3つに分類できるのと同じで、運動単位も支配する骨格筋線維によって3つに分類することができます。

Ⅰ型の筋線維(遅筋)を支配する運動ニューロンは、神経伝導速度や筋収縮は遅く、発生張力も小さいが、疲労しにくく、閾値が低い(小運動単位)という特徴があります。
それに対しⅡB型の筋線維(速筋)を支配する運動ニューロンは、神経伝導速度や筋収縮は速く、発生張力も大きいが、疲労しやすく、閾値が高い(大運動単位)という特徴があります。
ⅡA型は2つの間の特徴を持ちます(中運動単位)

このように、運動単位によって筋の収縮特性が別れていて、実際の金の中では、異なる運動単位に属する筋線維が混ざり合って存在しています。

サイズの原理

軽いものを持ち上げるとき、脊髄前角の一定の運動ニューロンプールが興奮しますが、すべての運動ニューロンが一斉に興奮するわけではありません。
先程のお伝えした閾値の小さな運動ニューロンから興奮し、徐々に閾値の高い運動ニューロンが興奮します。
そのため、筋の収縮力を徐々に強めていくとき、収縮の最初のうちは小運動単位が動員され、遅れて大きな運動単位が動員されます。これを「サイズの原理」といいます。

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出典:サルでもわかる、「サイズの原理」 - 陸上競技の理論と実践~Sprint & Conditioning~

収縮力が弱くていいときには小さな運動単位によって力を小刻みに調節し、強い収縮力が必要なときには大きな運動単位によって力を荒く増減させるということです。

まとめ

骨格筋の構造から、筋収縮力についてざっくりまとめました。
次回はこれらのことを生かして、トレーニングの重量や回数についてまとめていきます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。

参考

  • Zsolt Radék(2018) 『トレーニングのための生理学的知識』 樋口満監訳 市村出版.
  • 坂井建雄・河原克雅編(2017) 『人体の正常構造と機能 改定第3版』 日本医事新報社.

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